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2020.6.8掲載  社説「時々刻々」

学校での対面授業再開 新教育スタイル確立の動き

論説委員 寺前伊平

 新型コロナウイルス感染症の影響で休校していた県内各地の学校で、およそ3カ月ぶりに授業が再開し、元気な声が再び学び舎に戻ってきた。とはいえ、子どもたちにとってはいつもの学校の雰囲気を取り戻すのには、気持ちの面でも少々時間がかかりそうである。
 学校生活が再開された1日、ほとんどの小学校では机と机の間隔をあけ、児童全員がマスクを装着。対面による授業が再スタートとなり、その中をテレビ画面越しに話す校長の言葉からは、児童と教師との一体感を醸し出すのに懸命のようだ。
 校内では、教室に入る前に足踏み式消毒スタンドを使って手指の消毒をしたり、換気やドアノブの消毒を励行。多くの児童が集まる集会は当面中止。県内ほとんどの自治体で、小中学校の夏休みを短縮して授業を実施する予定だという。
 また、子どもたちが待ちに待った地域での少年野球やサッカーなどのスポーツも、再開するところが多くなってきている。指導者との対面での練習や、集団行動に特に気を付けなくてはならない。「思いっきり体を動かせてやりたい」というのが親心だが、自主練習でどれだけ体力がついているのか、徐々に慣れさせていくことが必要だ。
 そこで、教育活動の再開とともに、「新型コロナ」の第2波が起きた際の在宅教育を見据え、新しい教育スタイルの確立も同時に進めなくてはならないのも確かだ。
 そのために、県教委は▼少人数編成となる小学6年、中学3年に対する教員の加配▼夏期休校短縮時の授業実施のための非常勤講師らの配置▼学級担任の補助としての学習指導員の追加配置▼学級担任らの業務を助けるスクール・サポート・スタッフの追加配置―など、学習保障に必要な人的体制を強化する。
 また、▼県立学校と29市町村立学校において、高速大容量通信ネットワークの整備▼ICT機器を活用した双方向授業などを実施するため、県立学校と特別支援学校(小・中学部)への情報端末整備―に着手。そして、▼児童生徒の健康観察を家庭と学校が共有するための、学習支援ツール利用のアカウントを27市町村、県立学校に発行する。
 さらに県教委は、来年度の公立高校入試で各教科の出題範囲を検討する。そのためのアンケート調査を県内の中学校校長や中学3年生らを対象に実施したばかり。11日に開く委員会でその方針が固まる見込みだ。
 学校の授業が再開しても「新型コロナ」により突きつけられた様々な教育課題から抜け切ることは当分できない。
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