奈良県内の政治経済情報を深掘

2020.5.18掲載  社説「時々刻々」

新型コロナ、独自支援策が自治体間で差 有事の際の財源確保を教訓に

論説委員 染谷和則

 新型コロナウイルスの影響を受けた経済支援対策として、全国民が享受する国の施策のほか、住んでいる市町村独自の支援策の充実が図られている。県の休業要請に応じた事業主に対して10万円の上乗せや、市内で使用できるクーポンの配布、給食費や水道料金の減免などなどだ。
 充実した支援策がある市町村がある一方、「隣の芝生は青く見える」ような声も耳にする。固定資産税や都市計画税、軽自動車税や住民税をはじめ、どこに住んでいても納めなければならない税金がある一方、このような有事の際、住民に対して各自治体ができることに差が出ている。
 県と県内の各市町村の財政状況は、全国にある1800を超える基礎自治体の中でもかなり悪い位置にある。収入に対する支出の割合を示す経常収支比率は、平成30年度の県内平均で98・4%(全国平均93%)で47都道府県中47位になっている。
 弾力性のない財政状況では、家計で言うところの貯金「財政調整基金」を積み立てることが難しく、それぞれの自治体が独自にできることに財源的な制限が生じる。この新型コロナの終息を願いつつ、一つの教訓として残すべきは、市民それぞれがわがまちの財政をきちんとチェックすることと、もう一つは自治体が営業力を高めていくこと―。
 全国知事会では、人口が多く潤沢な財源がある東京都とその他の道府県で明らかな支援策の差が指摘されている。あまり全国で報道をしてもらえないが、奈良県の資金融資制度は47都道府県で唯一、全期間で無利子。保証料無しになっている。その他の支援施策では、多くの指摘があるように他の都道府県に見劣る部分もあるが…。
 15日には県が、休業要請の一部を解除した。今後、感染防止と経済・社会活動の緩和、両立を図っていく。経済的に脆弱な県内自治体と、中小零細が多い県内企業という奈良の構造的な問題の中、経済を死なせないよう全力を尽くしていかねばならない。
 それにはもちろん財源が必要になる。有事の際に生じる地域ごとのこの差を埋め、県内住民の満足度、郷土愛を高めていくべく、官民が向き合い知恵を出し、「わがまち」を盛り上げていく必要がある。新型コロナから受けた脅威と教訓を活かし、次世代につなげるまちづくりが求められる。
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