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2020.4.20掲載  社説「時々刻々」

急がれる新型コロナへの治療薬 アビガンの臨床試験へ膨らむ期待

論説委員 寺前伊平

 政府の緊急事態宣言を受け、荒井正吾県知事が「新型コロナウイルスに感染しないために大都市への往来と、海外渡航の自粛」を呼びかけたのは、つい10日ほど前のことだった。そもそも同宣言を出すのが「遅すぎた」感がぬぐえない。
 県内でも感染者は日々増加し、様々な業種にわたって休業に追い込まれている。閉まったシャッターに張られた、客に対してのお詫びの言葉からは、店主の無念な胸の内が切々と伝わる。見えない敵と対峙するには、あまりにも非力である。
 そんな中で、注目されているのが新型コロナウイルスの治療薬。過去に開発され、候補にあがっているのが▼アビガン(抗インフルエンザ薬)▼シクレソニド(ぜんそく薬)▼ナファモスタット(急性すい炎薬)▼カレトラ(抗HIV薬)▼レムデシビル(抗エボラ出血熱薬)だ。
 前者3薬は日本で開発されたもので、後者2薬はアメリカで開発されたもの。中でも、期待が高まっているのが「アビガン」。安倍晋三首相の言葉を借りれば「アビガンはすでに120例を超える投与が行われ、症状改善に効果が出ているとの報告も受けている」とも。
 たしかに、富士フィルムは既存薬「アビガン」などの中から効果のある薬を探し出す臨床試験を行っている。アビガンは診療の現場からも効果が確認される声が挙がっており、さらなるデータの蓄積に期待がかかる。
 専門家によると、もともとアビガンはウイルスの増殖を防ぐ薬で、増殖する前に投与した方が良いとされる。そう考えても、8日に出した政府の緊急事態宣言が遅すぎたことに批判が集まるのは当然である。いま県に求められるのは、感染者を早期に発見し、とくに重症者への対応を怠りなく速やかに図ることが肝要である。
 県はきょう20日から、桜井市にある県保健研究センターでのPCR検査数を、1日あたり60件に増やすとともに、民間検査会社への委託も進める。専門病床も4倍に増やし対応する。
 どちらにしても、感染拡大から鎮静、さらには終息へと向かうための治療薬による対処が待たれる。現実には、新薬開発に1年から1年半かかるといわれる。既存薬の中からでも特効薬が世に出てきてほしいものだ。総力を挙げ急いでもらいたい。
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