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2020.2.17掲載  社説「時々刻々」

県内外国人労働者5年で倍増 「売り手市場」神話は崩壊

論説委員 染谷 和則

 県内の外国人労働者数が過去最高の5563人(令和元年10月時点)に上った。5年前の平成27年と比較するとほぼ倍増。人手不足と言われていた建設、土木への就業だけでなく、宿泊、飲食、医療、福祉への就業をはじめ、一般の方々との接点も多くなってきている。奈良労働局の調査によると、今後も増加で推移していく見込みだという。 少子高齢化に伴い、労働人口が将来的に減少し、さまざまな業種で人手不足が生じることが予測されている。大手飲食チェーン店などでは、これら人手不足に対応していくため、タブレットでの注文などに順次切り替えている。
 注文を係の方が聞く従来の方法から大幅に人員の削減と人件費の削減につながっているデータもあり、これら飲食業は益々タブレットなどのデジタル技術に人の仕事が奪われていくことになりそうだ。
 さらに改正出入国管理法が昨年4月に施行されたことにより、外国人労働者が次々と、さまざまな業種で就業する。専門分野への進出も法緩和され、益々、日本人の若い世代の仕事は加速的に少なくなっていくことが確実視される。
 昨年の内閣府が実施した初めての調査で「引きこもり」や「ニート」と呼ばれる人たちは15歳~39歳で推計54万1000人、40歳~64歳は同61万3000人いると、驚愕の数字が公表された。
 これら就業していない人たちは2つに大別できるという。一つは「働きたくとも働けない人」と、もう一方が青い鳥症候群に代表される「もっとふさわしい仕事があるはず」と高を括っているモラトリアムな人たち。 筆者がたまに邪魔する料理屋はパキスタンの人を調理補助に雇っている。店主曰く「日本の若者より全てが一生懸命。仕事はもちろん言葉を覚えようと必死です。なんせ高い旅費を払って日本に来てくれているんですから」と。バイタリティのある外国人労働者の方々と、一部の無気力な日本の人たち。こうなると、将来の日本が思いやられる。
 膨らみ続ける社会保障、増え続ける高齢者、これらを少ない現役世代で必死に支えていかねばならない日本の構図。外国人労働者との共存や、ICT化も大切だが、それと反比例して働き口が益々なくなっていくことも考えねばならない。 飽食の時代だが、仕事は「売り手市場」ではなくなる時代が、もうすぐそこまで来ている。


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