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2020.1.13掲載  社説「時々刻々」

子どもを産むべき世代の定住 住みよい環境整備こそ行政責任

論説委員 寺前 伊平

 御所市名柄出身の作家で経済企画庁長官だった故・堺屋太一さんが名付け親の「団塊の世代」。高度経済成長を下支えしてきた人たちだ。その団塊の世代が、令和7(2025)年にはすべて75歳を超える。
 国民の平均寿命は、男女合わせて84歳と世界のトップレベルをひた走る。将来的な年金、医療、介護といった課題に頭を悩ませながら、超高齢化の裏に忍び寄る「人口減少」は深刻化していると言わざるを得ない。
 年金に不安を抱えながらも、働く意欲のある人ができるだけ長く働ける社会をつくらなくてはならない。そして、老後のより良い住環境を持ち続けたいと思うのは、誰もの願いである。人口減の本質は、果たして「出生率」で話が止まってしまっていいのだろうか。
 そう強調するのは、阿古和彦葛城市長。週刊東洋経済臨時増刊2019」の都市データパックの「住みよさランキング」によれば、同市が全ての数値データを集めた偏差値52・678で総合評価が全国812都市中34位と上位に躍り出た。
 近畿でも大阪市、御坊市(和歌山県)に次いで3位。奈良県内では総合評価で葛城市の次に来るのが生駒市の412位、橿原市の441位と大きく水を開けた格好だ。
 そのうえ葛城市は子育て部門に限ると、医療費助成それだけで全国1位。昨年4月から、高校生までの医療費無料化を決断したことに起因する。さらに東洋経済は、同市を老年人口当たりの介護施設定員数全国13位を安心度の上位に上げ、人口3万7000人の同市が大阪への通勤者も多いベットタウンと位置づけ、転出入人口比率も44位につけた。
 思えばバブル絶頂期、若者は都会へと向かい、流出してその土地にいなくなった時代があった。その頃、生まれ育った土地で待つ50代の人は30年経ったいま80代に。その間、下はほとんどいない状態。高齢の人はやがて他界、、人口が減っていく現象が続く。
 そう考えると、人口減の本質は葛城市長の言う「子どもを産むべき世代がいないから」である。行政の任務は若者の流出を防ぐ手立てを尽くすところにある。東洋経済の偏差値から見えることは、市民サービスの中身、特に医療、子育て、介護などへの手厚い施策にあるようだ。

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