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2019.12.23掲載  社説「時々刻々」

五條市官製談合の疑惑追及 百条委設置は本気度の〝踏絵〟

論説委員 染谷 和則

 五條市が建設したシダーアリーナの物品調達の入札で、官製談合が疑われる数々の事柄が指摘されており、市議会は調査特別委員会を設置して不正に支出された公金や関与した業者などを追及している。これらが含まれる昨年度の決算認定は9月から継続審査になっていたが、市議会は12月議会において全会一致で不認定とした。
一連の疑惑は、体育館や運動公園を管理する市の公園緑地課元課長補佐の主導で行われたと見られ、既に県警が「事件性がある」として捜査。市が保管している入札資料などを持ち帰っている。
バスケットゴールやハンドボールゴールなどスポーツ用品の購入に対し、法人登記がなく市発注の仕事が年商のほとんどを占める複数の業者が、予定価格ぎりぎり(平均96・61%)で交互に落札していること、柔道界に強い影響力を持つ元課長補佐の独断と1社による見積もりで納入すべき物品の仕様や予定価格が決められていたことなど、巨大で深い問題が山積している。
地方自治法98条に基づき市議会が設置した調査特別委員会では、これらのさまざまな問題に対して明らかにしようと、市による業者に対する聞き取りなどを行ってきたが、業者は「忘れた」「資料を失くした」などと、のらりくらり。問題の核心に届いていない。
同委員会ではさらに突っ込んで関係者への出頭や証言を請求することができる「百条委員会」を設置する意見も出されている。百条委では、関係者の資料、証言の提出拒否などに禁固刑を含む罰則が伴い「忘れた」「覚えていない」などの虚偽は許されない。
決算は全会一致で不認定としたが、この百条委の発動については議会の温度差が垣間見える。不正の根を明らかにし、膿を出し切ろうとする派と、落としどころを探している派だ。今後、この百条委設置の提案があるか、ないか。また設置の提案に対し、それぞれの市議が賛否の態度をいかにとるか、見極めねばならない。
住民の意見を代弁する議会は開かれた場所。規律を守れば傍聴は可能だ。疑われている官製談合をはじめ、一連の不正と思われるものを洗いざらい出し切ることが求められている。
市民の血税がとある利権に食われていたなら、うやむやにすべき問題ではないはずだ。

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