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2023.11.20掲載  コラム「而今」
 AIをはじめとした最先端技術の世界では今「トロッコ問題」の議論が熱を帯びる。1967年にイギリスの哲学者フィリッパ・フットが提起した「一方の人しか助けられない状況で、どちらを助けるか」というもの。いわば「切る」判断だ▼国や大阪の威信をかけて臨む大阪万博。会場で導入を目指す自動運転バスの実証実験などが試されている。万博の機運を高めるためのイベントも開催され、日本維新の会の吉村洋文大阪府知事も必死で協力を呼び掛けている▼その一方、会場建設費の大幅増や、参加国の減などの問題も山積。建設費をめぐっては、大阪市議会の万博推進特別委員会で、横山英幸市長が「約2兆円の経済波及効果が見込まれる」と理解を求め推進に力を込める▼猛虎の日本一で沸いた関西だが、物価高騰、厳しい経済、疲弊した世相…。「こんな時に万博の開催とは」と、一般市民のため息が、木枯らしに消える▼「身を切る」をスローガンに躍進を続けてきた維新。プライドをかけた万博は「切るに切れぬ」事情が見え隠れ―。威信は今、本当に必要か。    (包)
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