奈良県内の政治経済情報を深掘

2023.7.24掲載  コラム「而今」
 気が滅入る。うだるような蒸し暑い日が続いている。「気の狂った暑さが爆発する」と、作家の五木寛之氏は「私刑の夏」で、夏のある日をこう表現している▼タレントが自ら命を絶った悲しいニュースがあった。心から哀悼の意を表したい。本来の自分らしい姿と、SNSをはじめとした誹謗中傷に悩んでいたと一部報道もあるが、真相はわからない▼誰もが自由に手軽に発信できる時代。「表現の自由」との大義名分で、インターネットの社会では行き過ぎた誹謗中傷が散見。自らが全知全能の神になったかのごとく「私刑」に精を出す―▼匿名で無責任かつ暴力的なそれらの言葉は、人に対してだけではなく「レビュー」や「評価」などと名前を変え、さまざまな店舗や商品、サービスにまで及ぶ。まさに気の狂った世界が爆発している▼蝉(せみ)のあのやかましい鳴き声は、夏をさらに耐え難いものにするがその一方、風流でもある。狂った一部の人たちの雑音や戯言は、趣など皆無。自分以外へ思いを馳せる本来の世の中であってほしいと、切に願うこの夏。(染)
menu
information