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2022.9.5掲載  コラム「而今」
 「敬天愛人(けいてんあいじん)という四字熟語の意味は「天をおそれ敬う」ことと「人をいつくしみ愛する」こと▼西郷隆盛が学問の目的を述べた語として有名だが、「ミスターセラミック」と呼ばれた京セラの創業者、稲盛和夫さんの人生を支えてきた言葉でもあった。自らは「利他の心」という哲学を生み出した▼「自分だけが良ければ良い」と考える利己の心と、「自分を犠牲にしても他の人を助けよう」とする利他の心がある。利他の心で判断すると、周りの人が協力し、視野も広くなって正しい判断ができると説く▼同じ鹿児島県人の西郷隆盛を尊敬し、一代で京セラをグローバル企業に育てた稲盛さん。第二電電をつくり、経営破綻したJALを無給で引き受けて再建。自らの経営塾「盛和塾」で若い人材を育てた▼その稲盛さんが90歳で天寿を全うされた。30年ほど親交のあった、奈良鹿児島県人会会長の渡辺俊彦さん(78)は「私の人生観を変えた唯一無二の人だった」と悼む▼稲盛さんの「利他の心」は「敬天愛人」と共に深く人の心に生き続ける。      (寺)
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