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2022.6.6掲載  コラム「而今」
 「オーガニック」という言い方は、ごく普通に使われるようになった。有機農産物やその加工食品が注目されてきたことであろう▼そもそも、僧侶で医師であった五條市の故・梁瀬義亮さんが、60年以上前に近代農法を「土を殺し、益虫を殺し、人を殺す死の農法」と警鐘を鳴らし、「有機農業革命」を起こしたことに始まる▼梁瀬さんは、生産者と消費者が共に手を携えた、全国初の無公害食品の販売拠点「慈光会」を結成。作家・有吉佐和子著の小説『複合汚染』に「昭和の華岡青洲」と紹介された▼時同じく、残留農薬の恐ろしさが全国を駆け回り、ホタルの姿が見られなくなった。農薬が川中まで汚染し、エサとなるカワニナが死に絶えた▼梁瀬さんは有機農法の先駆者として吉川英治文化賞を受賞。「全国有機農業研究会」を創設するなど信念を貫き、平成5(1993)年に74歳の人生を閉じた▼そろそろホタルが光を灯しながら川沿いに飛び交う光景が、今年も県内各地で見られそうだ。当り前の初夏の風物詩ではあるが、梁瀬さんの功績とも重なる。      (寺)
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