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2021.6.14掲載  コラム「而今」
 年に一度、蛍が飛び交う時季がめぐってきた。夕暮れから光が灯っては消え、消えては灯り点滅が繰り返される。なんとも幻想的な光景だろう▼日本には40種類以上の蛍が生息しているといわれている。ただ、羽化後に発光するのはゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタルなど10種類ほどだ▼これも不思議なことに、点滅の周期が富士山あたりを境に関西型と関東型に分かれるという。ゲンジボタルの場合、関西が約2秒間隔に対して関東は約4秒間隔と長い▼与謝蕪村の俳句に「狩衣(かりぎぬ)の 袖(そで)のうら這(は)う 蛍哉(かな)」がある。薄い衣に入った蛍の光は一層美しさを増した、と詠んだ句▼子供の頃、竹ぼうきでとらえた蛍を家に持ち帰り、電灯を消灯にして狭い蚊帳(かや)の中に飛ばした。いつの間にか、蛍が手の上で点滅しているではないか。そんな思い出とも重なる▼近年、川は従来のせせらぎを取り戻し、蛍の幼虫のエサとなるカワニナが生息。県内の蛍の名所が復活している。コロナ禍でも、蛍を愛でる機会に出会える喜びをひしひしと感じる。      (寺)
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