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2021.5.24掲載  コラム「而今」
 このご時世でなかなか酒場へ足を運べないが、とりあえずビールは「とりビー」と略すらしい。最近はハイボールやレモンサワーが人気を集め「俺は」「わたしは」と多種多様に。そうなると提供に時間を費やすのは必然だ▼散歩がてらに足を運んだ近所の神社の掲示板に「自他同心」とだけしたためられていた。まさにこの混乱した時代、他人に思いを馳せたい▼各市町村で開始された新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐり、我先にと一部の高齢者が役所に押しかけたり、役所や病院へ問い合わせの電話は日々鳴りやまずパンク寸前になっている▼電話を受ける側は最前線で働いている人たち。慣れない仕事に月100時間に迫ろうかという残業続きの公務員も多い。こんな時こそ、他人を思いやる気持ちを▼「とりあえずビール」と、皆が合わせるのは前時代的で、個人の自由を奪うものだという批判もある。しかし、聞こえの良い個人自由主義や多様性を尊重し過ぎるあまり、日本が連綿と大切にしてきた謙譲の美徳を忘れてしまってはいないか。    (染)
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