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2020.10.26掲載  コラム「而今」
現三重県松阪市に生まれ、幕末から明治初めにかけて蝦夷(えぞ)地(北海道)を中心に諸国を歴遊した、探検家・松浦武四郎という偉人がいた▼常に野帳(のちょう)と呼ばれるフィルドノートと矢立(筆記具)を持ち歩き、旅先で見聞したことをメモやスケッチにして、後に書物にまとめた。今でいうルポライターであり、編集者、出版者でもあった▼明治維新には政府に登用され、蝦夷地に替わる名所として「北海道」の基となった「北加伊道」案を提案したことから、〝北海道の名付け親〟とも言われている▼『幕末の探検家―松浦武四郎』の著者で、同記念館の山本命主任学芸員によれば、明治18(1885)年から20年にかけて、近畿の屋根・大台ケ原へ3度探査に来ている。人生最後の地と決めていたという▼武四郎の功績は何といっても、蝦夷地の先住民族・アイヌの受難に心を痛め、アイヌ文化を守るよう訴えて行動したこと▼昨年の新法「アイヌ施策推進法」施行を受け今年3月、県内では「先住民族アイヌの今を考える会」が結成された。いまも差別の呪縛から解かれていない。(寺)
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