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2020.10.5掲載  コラム「而今」
 映画「太陽がいっぱい」で、アランドロン演じる主人公が友人のサインをまねて練習する場面がある。これを見て、印鑑はサインに勝ると思った▼このほど、河野太郎行革大臣は「業務の在宅化やネット化の足枷」として役所から印鑑をなくせと号令した。はんこ文化の否定だ。では方三寸金の国璽印はどうか▼印鑑のルーツはメソポタミア文明にある。紋章や文字を彫った円筒を転がして使った。例えば、荷物や手紙を粘土やロウなどで封をし、円筒印で紋様をつける。場合によっては、この紋様を割符に使い機密性をもたせた▼これがシルクロードを通じて、漢字文化圏に入り、われわれが使っている印鑑になった。漢字が表意文字であったことが、発展の原動力である▼デジタル化とかで、本人認証は様々な方法が採られようが、印鑑そのものをやみくもに否定する風潮はいただけない▼コロナの影響で、面談はリモート化。直接会ってもマスク越しの会話では、表情もうかがえない。殺伐とした世の中、ついに町内会の回覧でさえ、サインとなってしまうのか。   (耕)
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