奈良県内の政治経済情報を深掘

2020.6.1掲載  コラム「而今」
 県内の中山間地では、田植えのシーズンを終えてひと段落。苗が水田に規則正しく延び、日本の原風景を映し出している▼暗(くらがり)峠近くの生駒市西畑、飛鳥川のホタルの乱舞で有名な明日香村稲渕は、棚田の名勝地として知られている▼一方で、休耕田や耕作放棄地が年々増えている現実も見逃せない。何代も続く農家でも、少子高齢化と後継者難には勝てず深刻化している。国の農業政策も後手後手となり、採算がとれない台所事情もある▼かつて、農繁期には猫の手も借りたいぐらい忙しかった。手作業がほとんどの時代。日曜日には子どもも田植えや稲刈りに駆り出されたりした。「しんどい」手伝いだったが、畦で食べた「おにぎり」の味は忘れられない▼宇陀市室生砥取(ととり)の市道沿いの休耕田には、今にも動き出しそうな30数体の「かかし」が突如出現する。「農家の楽しい一日」がテーマの「かかし笑顔公園」だ▼子どもの姿が無くなったことに心を痛めた老夫婦が、手作りで再現した力作。大人と子どもが一体化した昔の農業の姿を、ドライバーにも見てほしかったに違いない。(寺)
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