奈良県内の政治経済情報を深掘

2020.3.16掲載  コラム「而今」
 今年1月、奈良市内で講演した森松明希子さんは、9年前に福島県郡山市から当時、生後5カ月の長女と3歳の長男を連れて、大阪市に避難してきた原発事故避難者だ▼国連人権理事会でスピーチをしたこともある森松さんは、事故後も小児甲状腺がんが増えているとし、「政府の施策はほとんど目に見えてこない。子どもたちを守るために被害を受けている当事者が声を上げていくことが大事」と聴衆に訴えた▼東日本大震災による避難者数(今年2月現在)は4万7737人を数える。奈良県内でも相当数の人が生活するが、避難指示が遅くなった地域で住民帰還の動きが鈍いのも確かのようだ▼福島は他に大きな問題を抱える。原発の汚染水の処分方法をめぐって、政府が海洋放出の利点を強調すれば、漁業関係者は水産業への風評被害を懸念し、タンク保管の継続を主張する▼これとて、保管場所に限界があり、処理水の移動は難しい―とのデメリットがある▼低温停止状態の燃料デブリの取り出しから、廃止措置終了まで30年から40年はかかるという。気が遠くなる罪づくりな事をしたものだ。(寺)
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