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2020.1.20掲載  コラム「而今」
 修験道の開祖・役行者(役小角)の生誕の地と伝えられる御所市茅原の吉祥草寺。西方に見える葛城山系で修業を重ねたに違いない▼ゆかりの深い同寺で毎年1月14日夜に行われる左義長(大とんど)という伝統行事を初めて目にした。小雨降る中ではあったが、雌雄一対の大たいまつの火が舞い上がり、最後は燃え尽きた▼こんなシーンはこれまで見たことがあったろうか。わずか1時間の行事だが、大たいまつの点火とともに、畏(おそ)れの念がはっきりと起こったことに気づく▼おそらく、役小角に突かれた葛城山に隠れる「神々」が下りてきたとしか言いようがない。神と人が同じ息遣いで、大とんどの火の粉に向けて吸い込まれる。その一瞬が小さな宇宙に凝縮され、夜空に輝いているのだ▼高さ6㍍もあるどっしりとした大たいまつ。2つの地区に分かれて、何日もかけて作られたはず。小さい境内に平行に立てられるも、その偉大さは疑う余地もない▼伝統行事は、本番の晴れの時がたとえ数時間だとしても、それに費やされた人々のエネルギーは、想像を遥かに超えるものだろう。(寺)
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